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帝国学園温泉にいく

「うわぁ~、温泉だぁ」
 声を発したのは佐久間先輩だったけど、たぶん同じことをみんなが思っていたと思う。
 自分だってそうだったし。
 成神はそう思った。
 いつも試合に行くときの送迎バスに乗って、ドアを開けたら湯煙の立つ不全のある温泉街だった。
 そして、目の前にたつ歴史を感じさせる和風旅館。
 言わずもがなテンションがあがる。
 今回、帝国メンバーで、温泉にくることになった経緯はこうだ。

 試合後疲れの残る体を奮い立たせ帰り仕度をしている時、佐久間先輩が
「あーっ、温泉とかいってぐだっとしたい」
と吐き出すようにいった。
「温泉かぁ、いいなぁ」
 源田先輩もそれにのる。
 そうこうしているうちに、メンバー全員で温泉話に花が咲いた。
 温泉卵食べたいだとか、とにかくだらだらしたいとか。
 そんな僕たちをみて、鬼道先輩はさらっといった。
「父の所有する温泉宿でよければくるか?」
 と。
 
 そんなわけで、今日、ここにいる。
 バスの中での惨事を思い出す。
 ドライブインで源田先輩が迷子になったり、辺見先輩のジャイアンカラオケとか、テンション高く鬼道先輩に付きまとう佐久間先輩とか。
 帝国学園の生徒から羨望のまなざしを受けているという事実をもう少し自覚した方がいいと思う。
 サッカー部に入ってから、成神は心の底からそう思った。
 みんなだまされてる。
 でも、きらいになれないんだよな、この人たち。 

 チェックインを終えた鬼道先輩が複数のカギを持って戻ってきた。
「これは佐久間と辺見の部屋の鍵、これは源田と成神の部屋の鍵、これは…」
 手際よく鍵を配っていく。
 そのカギを手際よく配っていく。
 そのカギを受け取った後、佐久間先輩は一瞬考えこみ、そして、辺見先輩を見て、その後鬼道先輩を見た。
「鬼道さんっ!!鬼道さんはだれと?!」
「俺は一人部屋だ」
 11人なんだから当たり前だろといいたげだ。
「いやです!俺、鬼道さんと同じ部屋じゃないと寝れません!!」
「そんなわけないだろ……」
 なんて、うざい先輩なんだ。
 佐久間先輩は目にもとまらぬ速さで手持ちの鍵と鬼道先輩の鍵をチェンジし、その鍵を辺見先輩に放り投げた。
「俺はよくても、辺見は一人じゃないと寝れないそうです!!なっ?!」
 反抗を許さぬ強い視線である。
「……そうなのか?辺見」
 辺見先輩は大きく息を吐く。
「……もうそういうことでいい。
 正直、佐久間と二人部屋だと、一晩中恨み言を聞かされて寝れなさそうだから、鬼道、同じ部屋になってやってくれないか」
 その図を想像できたのか、チームメイトは一斉にうんうんとうなづいた。
「そうか」

 鬼道先輩はすんなりと承諾した。
 この人はなんだかんだでチームメイトに甘いなぁ。
「へ・ん・みぃっ!!
 よくやったぁ!!お前、大好きだぞっ」
 佐久間先輩は勢いよく辺見先輩にハグをした。
 そして、その後、突如勢いよく突き飛ばす。
 あたまをガツンと柱にぶつけた。
 あっ、ハゲ進行しちゃう。
「一番は鬼道さんですからねっ!
 俺の一番大好きは、鬼道さんですから!!!」
 目、キラッキラしてる。
「くそっ!!佐久間!
 てめぇ、なにすんだよ!!!」
「あっ、わりぃ」
 辺見先輩に一目もくれず、これである。
「鬼道さん、お荷物お持ちしますね!」
 そのままエレベーターの方へ向かう。
 なんて、うざい先輩なんだ……。
 あきあきしないだろうかと思い、まわりと見渡すがいたっていつも通りだ。
 この人たち、最低でも1年以上これに耐えてきてるんだもんなぁ。
 驚愕する。
 そして、慣れてきている自分が怖い。
 その時、ポンッと肩に手をおかれる。
 源田先輩だ。
「成神、荷物早く置きにいこうぜ。
 そして、温泉だ!!温泉!!」
「はい!」
 俺はこの人が(たまによくわからないところもあるけど)熱くて、面倒見がよくて、一番好きだ。
 正直、同じ部屋でよかったなぁ。
 そう、前を歩く背中を見ながら思った。

 服を持っていくのが面倒という理由により、浴衣に着替えた源田先輩と僕は、部屋から出た瞬間に辺見先輩と遭遇した。
「災難だったな」
「もう慣れた。
 まったく、あいつはしょうがないやつだな」
 同じように浴衣に着替えていた。
 考えることは、みんな一緒なのかもしれない。
 辺見先輩は苦笑した後、
「まぁ、温泉いくなら、佐久間と鬼道にも声かけにいくか」
「あぁ、あいつ。
 案外寂しがりだから誘わないとグレるしな」
 源田先輩が、コンコンとノックすると、勢いよくドアがあく。
「源田か?!」
「おぉっ、佐久間」
 すでに同様に浴衣を着てた。
 すごく焦ってるみたいだ。
 様子が変だ。
「聞いてくれ!!
 鬼道さんは、大浴場いかないらしいぞ!」
「そうなのか?」
「せっかく、みんなで裸の付き合いって時に、それはないだろ?!」
「ん~、まぁな」
 玄関先でキャンキャン吼える佐久間先輩の後ろから、鬼道先輩が顔をだした。
 なんだかんだで、浴衣を着てる。
 ……着せられたんだ。
 そう直感で思った。
「鬼道、どうしていかないんだ?」
 辺見先輩が声をかける。
「風呂なんて、どこで入っても一緒だろ」
 返事に歯切れが無い。
「でも、せっかくみんなできたんだからなぁ。
 なにか、深いわけでもあるのか?」
 無言でかえす。
 そんな鬼道先輩を俺たちはじっと見つめた。
 それに耐えられなくなったらしい、おずおずと鬼道先輩は口を開く。
「ふ、不特定多数の前に肌をさらすとか……はずかしいだろ……」
 ほんのり、ほほが熱い。
 うわっ、俺、なんか少しキュンとした。
「鬼道さんっ!!!
 俺っ!!」
 とびついた!!
「なら!なら俺と二人でこの部屋の風呂入りましょうよ!
 俺、鬼道さんのためなら、温泉あきらめますっ!!」
「それは、断る」
 そりゃそうだろ。
 それなりにがたいもよくなった男子二人が狭い風呂に2人とか、どう考えても悪夢だろ。
「鬼道、佐久間は断っても入ってくるぞ!」
「あぁっん?!
 辺見、てめぇ、なにホラふいてんだよっ!」
 その反応はどう考えても図星です、佐久間先輩。
「それもそうか……。」
「いや、俺、そんなことしませんってばぁ」
 気がつくと、俺たちのうしろに通りかかった他のメンバーも、なんだ、なんだ?といって、ろうかは大変想像しい。
 その空気に押されつつある鬼道先輩の肩に、源田先輩がポンと手を置き、もう片方の親指をグッと着きたてた。
「鬼道!でっかい風呂いこうぜ!!!
 風呂はでっかいほうが気持ちいいぞっ!」
 ……この人は。
「……わかった、みんなでいこう」
 鬼道先輩は大きくため息を吐いた。
 それでも、まんざらでもなさそうなので、この人は、本当にこのチームが好きなんだなと思わせた。
 それがここちよくて、俺は11人でぞろぞろ歩く団体の一番後ろを気分よく歩いて温泉に向かった。

「鬼道さんが、ゴーグルとって、髪をほどいてるの、はじめてみました!!」
「だから、じろじろみるな」
 ちゃっかり、鬼道先輩の隣をとって、髪を洗っている佐久間先輩を見て、さすがだなと思う。
「髪ほどくと、ちょっと俺と似てますね」
「うっせぇ、寺門、よんでねぇんだよ!!」
「佐久間、お前、ひどすぎるだろ……」
 佐久間先輩は鬼道先輩と寺門先輩をじろじろと見比べた後、
「鬼道さんのほうが、断然いい」
 と断言した。
 ……この人は……!!
「だから、じろじろみるなといってるだろ!!
 さっきから」
 災難だなぁ……鬼道先輩。
 湯船につかって、そんな様子を眺めていたら、さっきまで水風呂に入ったり、湯船に浸かったりを一人で繰り返していた源田先輩がきた。
 この人は、隠すつもりがない。
「成神!!露天風呂いこうぜ!!」
「あっ、はい」
「鬼道も佐久間も、露天風呂よさそうだぞ!
 早くいこうぜ!!!」
 なんだかんだでこの3人は仲良しだ。
 ゾロゾロとみんなで外風呂に向かった。
 露天風呂は、古典的な岩風呂で、空気は冷たくて、ほてった体には気持ちよかった。
 やっぱり温泉はいいなぁ。
 ゆぶねに浸かってまったりした。
 視界の先には、楽しそうに鼻歌を歌う源田先輩とか、外の景色を眺めて気持ちよさそうにしている鬼道先輩と、それを眺めてニコニコしている佐久間先輩。
 いつも通りすぎる。
 それがなんだかおもしろくて、ぼーっと眺めていた。
 その時、突然お湯をかけられる。
「なにするんですか?!」
 水がかかってきた方をみると、豪快に笑う源田先輩がいた。
「気を抜いてるほうが悪い!」
 ここ、温泉なんですけど……。
 まけずとお湯をかけなおしやる。
 しかし、それをことごとく避けられる。
「キーパーなら受け止めてくださいよ!」
「今日は休みだから、関係ない」
 勢いよく乱発していると、その中の一発がモロに鬼道先輩にあたった。
「す、すみません!!」
「まぁ、気にするな」
 本当になんでもないことのように言われ、思わず胸がジーンとした。
 鬼道先輩あっての帝国学園だ。
「成神ぃ!!
 鬼道さんがいいってもなぁ、俺がゆるさんぞ」
 おけをつかって、頭からお湯を勢いよくかけられた。
「ずみまぜぇん」
 うぅっ……お湯、むせる。
「そもそも、源田、てめぇが調子にのって避けたりするから、鬼道さんに迷惑かかんだろっ!」
「すまん、佐久間、落ち着け」
 ジリジリとしのびよる佐久間先輩。
 何度も乱発するお湯を器用によける源田先輩。
「くそっ、源田!
 よけんなぁっ!!!」
「……つい、体が反応するんだよ!」
 本当にその言葉のとおり、反射でよけているようで、表情は大変申し訳ない顔をしている。
 それにイライラ佐久間先輩は、スピードをあげる。
 正直、佐久間先輩と源田先輩がお湯の中を動きまくってて、そっちの方が鬼道先輩は迷惑そうにしていた。
「これも、くらぇえ!!」
 結局、手に持っていたおけをそのままぶん投げることにしたようだ。
 佐久間は大きく振りかぶると、そのまま前へ……と見せかけて、大きくすべり、そのまま前につっこんだ。
 温泉の床って、つるつるするもんね。
「大丈夫か?!おい、佐久間!!」
 源田先輩がガクガクとゆらすも反応はない。
「佐久間?!」
 出血こそしてないが、気をうしなったらしい。
 
「まったく、人騒がせな」
 あのあと、人がきて、部屋に佐久間先輩が運ばれて、直接の原因はのぼせたらしいということが判明し、寝かしつけられている。
「すみません……」
「風呂ではさわぐなと言われてるだろ」
 鬼道先輩は、しょうがないなぁという顔をしながら、まだ湿っている紙をなでてあげてた。
「すいません……」
 様子を見に来て、ぎゅうぎゅうになっていた俺たちの方をみて、鬼道先輩がいった。
「佐久間は俺が見とくから、お前たちは夕飯たべにいっていいぞ」
「俺がついててもいいぞ」
 辺見先輩は、なんだかんだでやさしいな。
「まぁ、俺が同じ部屋だしな。
 気にするな」
「うぅっ……鬼道さぁん……うぅっ」
 佐久間先輩は、泣きそうだけど、うれしそうだ。
 二人を残して部屋をでる。
「佐久間先輩、大丈夫なんですかね?
 源田先輩」
「まぁ、鬼道がついてるし、大丈夫だろ」
 この人、基本的にのんきだ。
「よーし、メシだメシ!!」
 といって、大きくのびをする。
「成神、肉嫌いだったら、俺が食べてやるぞ」
「好きなんですね」
「おう!!」
「僕も好きです」
「……そうか」
 源田先輩は肩を落としてシュンとしていた。
 仕方ないから、後で何か少しあげよう。
 夜はまだ始まったばかり。
 そう思うと、なんだかとっても嬉しかった。

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帝国における私の好きなCPを全部詰め込んでみました。
・佐久鬼
・成源
・佐久辺
・佐久源
・源鬼
帝国がみんなで仲良くしていれば、何も問題ありません キリッ。
帝国で夏祭り~ とかいろいろ書いてみたいなー!

2010.07.08 | イナズマイレブン 小説 | Permalink

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